切られたのは私の方だったのだーーアニメ『ホリミヤ』の視聴をやめる

中学生の頃、『堀さんと宮村君』というWeb漫画をずっと読んでいた。
投稿頻度が高くて、毎日サイトを覗いては更新がないか楽しみにしていた。

行動や感情が「ふりきらない」ところがリアルで、繊細だった。

私は『堀さんと宮村君』――通称「ホリミヤ」が大好きだったのだ。

 

作画を別に据え、『ホリミヤ』というタイトルで漫画&コミックス化されたこの作品は、2021年1月からついにアニメ放送が開始した。アニメ化を知って調べたティザームービーの絵は美しく、キャスティングもこれ以上ないほどに(個人的に)完璧だった。私は間違いなく、アニメの開始を楽しみにしていた。

1,2話をまとめて見た。「おや?」と思うことがちらほらあった。それでも「ホリミヤ」が好きなので、見続けようと思った。

そして今日3話までアニメを見て、もう見るのを辞めようと思った。

 

 

第1話。しょっぱな、先生が堀をまじまじと見て「貧乳を気にするな」と言った。

おや、と思う。原作にこういうシーンがあったか忘れてしまったけど、この令和の時代に、先生が生徒にそんなことを言う場面をわざわざ入れる必要があったのだろうか。でもやっぱり絵はきれいだ。気にせず見よう、と思う。

石川から告白された堀。その日の夕方、宮村と話すシーンで、透からの告白なんてどうでもいいと斬り捨てる。翌日、様子がおかしい透を見たゆきに「なんかあったのかな?」と訊かれるが、しらない。と答える。はぐらかしているのではなくて、本当にわからない感じで。

え、堀、デリカシーなさすぎない?

 

石川への対応へのモヤモヤは堀だけに留まらない。石川がまだ堀のことを好きであると知っているのに、宮村は堀の家に毎日のように通い、堀家のリビングで「堀さん人差し指だけ少し反ってるね」なんて話をしながら二人で恋人つなぎをしたりする。それなのに、石川に対しては「堀さんは俺のことなんてなんとも思ってないよ」と言う。

え?お前、透が堀のこと好きなのを知ってるよな?なんなら応援するみたいな姿勢見せてるよな?宮村、これどういう気持ちなの?

堀と宮村がどんどん無理になってきた。

 

『堀さんと宮村君』はもともと4コマ漫画だった。だから起承転結の展開がはやいし、キャラクターの行動も突飛でも成り立っていた。

堀みたいな、いわゆるツンデレ暴力ヒロインも流行っていた。

貧乳をいじるようなネタも普通だった。

中学生の私だって、そんなこと全然気にせず目を輝かせて読んでいた。

でもさ、それは『堀さんと宮村君』の本編が絶賛連載されていた時の話なんだよ。

それ、15年前も前の話なんだよ。

今、それを同じテンションでやるの?

 

ホリミヤ』が雑に作られているとは思わない。むしろ、作画の美しさや凝った演出を見るとこだわっていると思う。

でも、それならどうしてもっと、15年の時代の変化を汲んであげられなかったのかと思ってしまう。『ポプテピ』や『おそ松さん』みたいに割り切って短編を繋げるような作りではなくストーリーものとして仕上げるなら、どうして4コマの行間をもっと丁寧に埋めてくれなかったのかと思う。

 

モヤモヤしすぎてTwitterで検索したら、「きゅんきゅんする」「ときめく」と好意的な感想ばかりだった。みんな気にならないのか? これを普通に見られるのか?

納得いかな過ぎて5ちゃんねるのスレまで検索してしまった。スレでもおおむね好意的だった。少なくとも、私が気にしていることを指摘している人はほとんどいなかった。それでもやっと、「最初の貧乳ネタで切った(見るのをやめた)」という意見を発見した。だけどその書き込みには「そんなの誰も気にしてねーよ。切られたのはお前」というレスがついていた。

それを見て、なんだか腑に落ちてしまった。

そのレスをつけた人が正しいとは言わない(匿名だからと言ってそういう言葉遣いを平気でできてしまう奴は何にせよ嫌いだし)。でも、「切られたのはお前」というのを見て、そうかもしれない、と思ってしまった。

 

冒頭に貧乳をいじる教師ネタがあるのは、制作サイドがそれを大きな問題と考えなかったからだ。そして事実、ネット上でそれを指摘する人はほとんどいない。みんな気にしていないということだ。

堀や宮村に対してデリカシーがないと言っている人もほとんどいなかった。「石川かわいそう」という意見はちらほらあったけど、それはだいたい「石川かわいそうw」のテンションであり、本当にそれを嫌だと思っている人はほとんど見つけられなかった。

制作サイドが「問題ない」と判断しており、視聴者の大半は実際気にしていない。それはつまり、気になってしまう私の方が、『ホリミヤ』のターゲットではなかったということだ。

そして、それと同時に、私もまた、「ホリミヤ」から離れてしまったのかもしれない、とも思った。


15年経ったのは私も同じだ。その間に、エンタメにもアニメにも詳しくなってしまったし、世の中のいろんな立場や意見があることも知った。

これは差別じゃないのか、これはいじめじゃないのか、これは偏見じゃないのか。こっちのキャラは傷つけられてもいいのか。こんな態度でどうしてこのキャラはこのキャラのことが好きでい続けられるのか。そういう細かいことが、中学生の時よりずっとずっと気になって、目につくようになってしまった。

 

アニメ『ホリミヤ』への違和感がどうしてもぬぐえない。でも、今の私が、Web漫画の『堀さんと宮村君』をもう一度読んだらどう感じるのだろう。あの時と同じように手放しで楽しめるのだろうか。当時はよくて、今は許せないことがたくさんあるんじゃないか。

だって、アニメのストーリーで気になった部分は、記憶違いでなければ原作にもあったから。堀が石川に対して冷たいのも、暴力的なのも、原作通りだったから。

私はそれでも「ホリミヤ」を好きと言えるのだろうか。

 

 

ホリミヤ」が大好きだった。これからも好きでいたい。だから、続きを見るのはやめておく。